2014/02/27

離れていても機能するマネージメントを獲得する

ベンチャーは地方でチャンスをつかめ!
〜沖縄で飛躍的に成功する40の法則


 ベンチャーという小さな組織では、経営者なり、起業家なりが、強烈なリーダーシップをもって、ついつい全てをコントロールしがちです。「従業員50人の壁」という言葉をときどき耳にしますが、これは社員がある程度、増えてくると、従来通りの意思疎通や、仕事の進め方では破綻してくるので、新しいマネージメントなり、組織体制が必要になってきますよ、ということを象徴しています。

 一方で、沖縄に定着したベンチャー企業を見てみると、この「50人の壁」を易々と乗り越えています。なぜだと思いますか?

 たとえば、東京から沖縄に進出されたベンチャーさんは一般的に、東京に本社・営業機能を残し、沖縄で開発やデザインなどの制作・納品機能を展開します。経営者はこれまで自分の目の前で展開する組織の仕事ぶりを文字通り目視し、思いついたときに相手を目の前に呼び出して、直接コミュニケーションをとるという、極めて理想的な環境でのマネージメントに慣れています。しかし、チームが、東京と沖縄といったように、全く離れた2つの拠点に分かれてしまうとそうはいきません。

 沖縄進出ベンチャー経営者は「50人の壁」を迎える前に、「離れた拠点の壁」、つまり、遠隔マネージメントを成功させなければいけないのです。メンバーに求める報連相の仕方も、従来のつきっきり体制でチームの面倒をみていたときと全く異なるやり方、ルール、システムが当然求められてきます。そして、この新しいマネージメントを体得した経営者は、ますます自社の成長速度を上げていくことができるようになります。

 離れた沖縄に拠点を持ったら、不思議と成長したというベンチャーは多く、沖縄マジックと呼ばれています。しかし実は、この遠隔地マネージメントを経営者が自然と体得してしまったというのが、マジックの種明かしです。東京とは圧倒的に離れた沖縄で、経営者として必要な学びが、早々にできるというお話。


 連動して、沖縄進出ベンチャーの次の新規拠点はアジアになる、というからくりは別の機会にお話しますね。



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2014/02/26

効率よりも、全部できること(ワンストップ)が求められる

ベンチャーは地方でチャンスをつかめ!
〜沖縄で飛躍的に成功する40の法則




 沖縄では、救急車のたらい回しがほとんどないということをご存じでしょうか?

 それには2つの理由があります。
 1つはベトナム戦争の経験です。60年代、沖縄はベトナム戦争における米軍の前哨基地でした。沖縄からベトナムへ従軍兵士が送られ、帰路の便には、負傷した米兵を乗せ、沖縄に戻って来ました。このときの救急医療の技術・ノウハウが、うるま市にある沖縄県立中部病院を中心に移植されました。その結果、沖縄は全国でも屈指の救急医療先進地となりました。

 2つめの理由は、小さいが故に医者も少なかったという理由です。離島においては、『Dr.コトー診療所』よろしく、その地域には医師が一人しかいない場合が多々あります。乳児の急患がでた場合、「私は外科なので、明日、船で本島の病院へ行くように」と指示するわけがありません。小さな、しかも隔離されたような集落の医師は、まずはあらゆる事態に対応を求められ、救急かつ最善の措置をとることを求められます。

 このような、沖縄ならではの歴史的、地域的な背景もあり、沖縄医療従事者は鍛えられ、緊急時には東京より沖縄のほうが安心できるという状況が生まれているのです。

 さて、このようなワンストップ感覚、ワンストップの覚悟は、アントレプレナーやベンチャーにとってもひじょうに大切な資質の1つです。

 大企業であれば、効率を最重要視しますので、自分は特定の仕事に注力し、他の仕事は機能分化した他部署に任せます。また、継続的に発生しないと思われる業務は、アウトソースすることが合理的な経営判断となります。しかし、こういう機能的な職場に長く慣れ親しんでしまうと、よくて専門バカ、悪ければ、特定職務以外では全く役に立たない、ヒト型特殊歯車と化してしまいがちです。

 一方で、資金的な余力が少ないベンチャーにとっては、何でも自分でやるというスタンスが重要になります。作るのも、売るのも、宣伝するのも自分の役割です。

 ましてや沖縄は首都圏の経済圏と比べると圧倒的に小さい、というか無い(苦笑)。人材も求人誌に出せば集まるというような人口ボリュームがそもそもないので、育てるところからはじめないといけない。ベンチャーは無い無い尽くしとよくいわれますが、沖縄(地方)のベンチャーはさらに<ナイ>のです。

 精神論だけでは、持続的・爆発的な成長は望めませんが、「なんでも来い!」という強い覚悟と信念は、うわべだけのシステムをどんなに構築しても解決できない問題をクリアしてしまうことがあります。そのことを沖縄の救命医療が教えてくれるのです。



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2014/02/05

究極の福利厚生、実質給料3割アップ!

ベンチャーは地方でチャンスをつかめ!
〜沖縄で飛躍的に成功する40の法則



 沖縄進出に際し、とてもユニークな経緯をもったベンチャーさんがいるのでちょっと紹介します。

 もともと東京に拠点を構えていた、このスマートフォン向けゲームアプリ製作会社さんは、業務拡大につき、地方拠点の新設を検討しはじめました。社長さんは直感的に、北海道か沖縄に開発拠点ができたらいいなと思い、まず、沖縄に下見に来たそうです。なにがあったのでしょうか? 一発で沖縄を気に入った社長は、北海道と比較検討することもなく、沖縄に拠点新設を決定しました。

 さすがクリエイティブ業界・・・(^ ^; でも、話はまだまだ続きます。

 沖縄での拠点新設を決定した社長は、15名の従業員にその旨を報告。そして、「沖縄開発センター立ち上げメンバーを募集するので、希望者は申し出てください」と、沖縄への異動希望を募ったところ、なんと社員全員が応募! ならばと、社長は会社の本店を東京から沖縄に移し、会社・従業員一式で沖縄にやってきたのです。

 社長が社長なら、その社員も社員。若い業界ですし、独身社員が多いということもあり、このようなドラマチックなことが本当に起こったわけです。

 で、本論はここからです。

 沖縄に子会社を新設したのであれば、東京本社と給与体系は異なる場合も十分あり得ますが、支店新設であったり、今回のように会社ごとの移転の場合(他に例を知りませんが・・・)、沖縄にやってきた社員は当然、給料は東京時代と同じです。容易に想像がつくかと思いますが、東京での生活と地方での生活費では必要経費がまったく異なります。沖縄の場合、東京より3割は安く生活することができますので、見方を変えれば、社員にとっては、沖縄に来ただけで、給料3割アップです。しかも異動希望先の土地。私が経営者であれば、余計な福利厚生に一切お金をかけないで、会社ごと沖縄移転です(笑)。


 さて、沖縄に来て生じた給料3割分のお金を、あなたは何に投資しますか?


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2014/02/04

社会実験がしやすい

ベンチャーは地方でチャンスをつかめ!
〜沖縄で飛躍的に成功する40の法則


 一般的に孤立していることはたしかにデメリットです。ネット通販で格安な商品を見つけても、沖縄や北海道は送料が高く、トータル支払額としてはちっともオトクでなかったりすることはしばしばです。

 また、他県との陸続きの境界を持たない沖縄は、モノやヒトのリソースを共有できず、商圏は狭く、小さく、事実、失業率は日本で最悪な4.5%となっています。(全国平均3.7%)
完全失業率の状況(平成2512
出典:「労働力調査」全国:総務省統計局発表、沖縄:沖縄県企画部発表

 ところが、その「孤立」をポジティブに利用しているのが、社会インフラから根本的に変えてやろうという独自技術開発型ベンチャーです。たとえば、通信、エネルギー、EV(電気自動車)を領域とした企業は、せっかく技術を開発しても、その有効性を検証、評価する環境が限られてきます。

 もしあなたの会社が、新しい通信技術を開発したとします。その技術をTVの電波に混在させて実証実験を行いたい場合、総務省やTV局からその許可・協力を得ることがまず必要だと思うのですが、東京で行うとしたらどうでしょう? 首尾よく、東京キー局のOKを勝ち得たとしても、電波は、神奈川県にも埼玉県にも千葉県にも届きます。当然、同じ放送が流れるローカル局側の承認が必要になり、説得する関連組織の数や、訪問に要する移動時間を鑑みると気が遠くなる作業です。一方で、関連組織の1つでもNGがでてしまえば、実証プロジェクトはそこで停止に追い込まれてしまいます。

 一方で沖縄はどうでしょうか? 沖縄での放送局は、一般的に沖縄県内のみに放送されます。交渉先は、総務省・沖縄通信事務所と沖縄のローカルTV局の2者で十分といえます。しかもそれらの所在地は、徒歩10分圏内です。
 
 あなたの会社がEV関連ベンチャーであれば、沖縄の狭小な孤立性はどう映るでしょうか? 沖縄本島におけるEV充電設備は62箇所ほどあり(平成255月時点)、今後227箇所の増設が計画されています。
沖縄県次世代自動車充電インフラ整備ビジョン

 EVの実用化環境として、沖縄は、日本でもっとも早く発展する可能性の高い地域といえます。東京からドライブに出発しようとすれば、北上して那須方面に行こうか、それとも軽井沢、伊豆へ、という機会が多いと思いますが、往復で約300400kmの移動になります。沖縄の場合ですと、もっとも長距離のメジャードライブコースは、那覇から美ら海水族館の往復で、約180km。陸続きの東京とは異なり、孤立した沖縄では先述のようにコースに沿ってEV充電設備も多く、EV技術研究開発型企業にとっては絶好の実験場になります。

 実際、沖縄本島よりももっと狭小で孤立した宮古島では、太陽光発電やバイオエタノール燃料、スマートハウスなどの社会実験プロジェクトを多く手がけており、次世代の私たちの暮らしを大きく変えるような成果が期待されています。

 実は、沖縄には世界的に有名なベンチャーキャピタリスト(VC)やテクノロジー企業がたびたび訪れ、沖縄で研究開発をしている、社会インフラを全く変えてしまうようなベンチャーと商談、提携、出資の話をされていきます。彼らにとっては、スマートフォンのアプリを作るベンチャーもいいのだけれど、世界を圧倒的に変えてしまうような、スケールの大きい、つまり、大化けするようなベンチャーに高い関心があるわけです。沖縄にはすでに、情報通信特区や、金融特区が存在していますが、もし、社会実験特区のような認定を受けるようなことがあれば、ベンチャーやVCのみならず、日本や世界が大きな恩恵をもっと受けることができるのではないかと思います。

 Think Different.




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2014/02/01

日本とアジアの真ん中で実現するビジネスモデル

ベンチャーは地方でチャンスをつかめ!
〜沖縄で飛躍的に成功する40の法則



 沖縄を中心に置いた地図を見てみましょう。岐阜女子大学HPより)

 沖縄から見ると、東京よりマニラの方が近いとか、福岡より台北の方が近いといった事実に正直驚きます。飛行機のフライトでいえば、沖縄は4〜5時間で、日本の都市すべてと、ソウル、北京、上海、香港、台湾、ハノイ、バンコクとを接続可能な<中心地>ともいえます。

 それがどうした? とお思いでしょうが、運輸業界の方はクールです。日本の各都市で、その日、生産した(東南)アジア向け工業製品や生鮮品を最終便まで待って、深夜に沖縄に運び込む。その日本中から集まった品々を、沖縄の倉庫で、アジア各都市向けに振り分けると同時に、同様にアジア各都市から最終便で飛来した荷物を日本各都市向けに振り分け、早朝、それぞれの貨物はまた飛んできた都市に戻るという配送システムです。このシステムにより、夕方、大田区の町工場で製造された部品は、翌朝、バンコクの空港に着き、午前中には目的の工場に納品されるということが実現しています。

 2009年、ANAが沖縄が日本とアジアを結ぶ中心地であることに着目し、この新しい事業を始めました。ほどなくして、このプロジェクトに次々とパートナーが集まってきます。沖縄ヤマト運輸が通関免許を取得し、このシステムを活用し、2012年からアジア圏における配送サービスの高速化を図っています。

 また新たに沖縄に倉庫を設けることにより、精密部品や製品の在庫基地としてサービスを広げたり、リペアセンターを沖縄に集約し、主にアジア各地で修理品を一括修理することにより、各国ごとにエンジニアの教育、修理センターの新規構築をすることなくメーカーにとっては素早く事業展開を行えるような新しいインフラサービスを整えようとしています。

 さらに翌年、楽天はこのインフラを利用し、「楽天市場」の海外販売サービス「Rakuten Global Market」において、これまで難しかった日本の生鮮食品を、香港向けに保冷輸送することで売上拡大を狙っています。

 沖縄ベンチャーもじっとはしていません。沖縄では有名な居酒屋チェーンのえんグループは、このアジアへの高速配送システムを活用し、すでに香港で展開していた自社の居酒屋へより新鮮な沖縄食材を調達したり、マカオの百貨店に沖縄食材を卸す事業をはじめたり事業強化を図っています。

 沖縄ではアジアの振興や、別稿にて述べる沖縄県の産業施策・特区などの設定もあり、こういったダイナミックなパラダイムシフトが往々にして起こりやすくなっています。

 しかも、このANAの沖縄貨物ハブについては沖縄の経済人であれば誰でも知っているモデルなのですが、どういうわけか東京ではあまり知られていません(笑)。こういった変化を真っ先に活用できる機会に恵まれていることは沖縄ベンチャーにとって大きなアドバンテージなのです。


ANA沖縄貨物ハブ&新・航空ネットワーク
http://www.ana.co.jp/cargo/ja/int/okinawa/


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